迷宮キングダム用シナリオ「すべての民が消えた夜に」

hellbabyパパに触発されてシナリオを晒して見る。
これは冬のコミックマーケットでだした本にものっけております。
モンスターデータを調整して、1レベル対応にしてありますのでご了承ください。

なお、プレイヤーをする予定の人は読まないことを推奨しておきますよ?
(ちなみに、自分は後輩のところやサークルなどで2回ほど使ったので多分もう使いません)

で、本文はこの下に。















迷宮キングダム用シナリオ「すべての民が消えた夜に」
対応レベル:1〜2/4人程度の宮廷
プレイ想定時間:2〜3時間(キャラメイク含まず)


■前口上1■
国王の誕生日を間近に控えた、平穏な王国を暗い影が覆う。
何か後ろめたそうに、秘密を抱えた国民たちは顔を背ける。
そんな時、隣国から民を奪い取る悪魔アートパイパーの目撃情報がもたらされる。
ランドメイカーよ、武器を取れ。


■GMへ■
 種明かしをしてしまうと、このシナリオの真相は
「いなくなったと思っていた国民は、実は王様の誕生日を祝うために
隠れて準備をしていた」というものです。
 シナリオの文章中では秋の話になっているので、もし王様の誕生日が他の季節と
決まっていた場合は季節の演出を変えるか、誕生日ではなく秋の収穫祭の前という
ように変更してください。(シナリオ的には誕生日にすることをお勧めします)
 ですから、GMは最後の部屋に入るまでランドメイカーの心に多少のストレスを
与え、ネタバレをしないようにすることが必要になります。(結末はハッピーエン
ドなのですから、せいぜい脅かしてあげましょう)
 ただし、あくまでも「もしかして愛想を尽かされてしまったのだろうか、あるい
は何者かにさらわれてしまったのだろうか」と物事が明確にならないようにするこ
とが大事です。


■導入1■
★導入は宮廷の日常と、その異変を知らせるシーンです。
読み上げるだけではなく、プレイヤー達も会話に参加するようにするとよいでしょう。

 収穫の秋。
 気候不順への備えなどで、例年よりも厳しい政策を取らざるを得なかったが、その
お陰か収穫はそこそこ順調だ。これならこの冬に飢える事なく過ごすことができるだ
ろう。
 一息ついた君達は王宮に訪れる客の応対に移る。国民、商人、そして、近隣の国か
らの使節。どれもこれも、無視するわけには行かない重要な相手だ。
 電子戦装備で身を固めた隣国の未来ニンジャが、PDAを片手にこんなことを言っ
てきた。
ニンジャ「我が主より、友好国家であるあなたがたにお伝えしたき議がござる」
PDAの画面に隣国の国王の姿が浮かぶ。
隣の国王「親愛なる友よ、大変な情報がもたらされた。幾多の国家を消し去ってきた
異形、アートパイパーがこの近辺で目撃されたというのだ」
「アートパイパーに魅入られた国は民の心が宮廷から離れ、一人、また一人と消えて
いき、最後はだれもいなくなってしまうという」
「我が国も警戒は怠らないが、そちらもご注意なされよ」

 ニンジャが去った後、宮廷を重い空気が包む。
 そう、ここ数日なんとなく民の様子がおかしいのだ。

 王宮に行儀見習いとして努めている娘に話を聞いても、答えは同じ。そういやこの
娘も最近体調不良とかで休みが多かった。
ナンプラーの娘パヤット「いやですわ王様、私達は何も隠し事なんかしてませんわ」
 そして、国境を守る騎士団から「怪人出現、国民誘拐」の報を受け、ランドメイカ
は急遽出動する。


■緒戦■
 変則的な導入ですが、いきなり戦闘からスタートです。
 円卓会議などは行いません。なぜならば、目の前で事件が起きたのに悠長に会議を
している暇などないからです。
 ランドメイカーは再度迷宮となった国境近辺でアートパイパーと戦うことになります。 この戦闘は新しいマップなどは用意せずに、国境のちょっと外で行われているとだけ
言っておいてください。

敵:アートパイパー*1(本陣)
二面人*1(後衛)
みみず*3(前衛)
極悪中隊*3(後衛)

 この時点では突然の出動だったために何も準備はできません。
 部下を連れて行けるのは、騎士(あるいは誰か一人)だけ、1D6人連れて行くこと
ができます。
 アートパイパーを倒せば、1D6人の国民が帰ってきます。
 ここで増えた国民と、はじめに連れてきた国民の生き残りがこのシナリオで使用でき
るすべてのリソースになります。
 終了フェイズに移ることなく、導入2へ移ってください。

*注意:アートパイパーはレベルの割りに回避値が高く、なかなか攻撃を当てる事がで
きません。GMは不慣れなプレイヤーには「好意を持った相手への協調行動」や、「回避
の低い騎士などがアートパイパート同じエリアに入って騎士を遠隔地から銃で撃って、
アートパイパーへのまぐれ当たりを狙う」など、さまざまな戦術を教えても良いでしょう。

■前口上2■
魔物退治から帰還したランドメイカーが見たものは、出迎えも何もない無人の国。
民の心は本当に離れてしまったのか。真実を突き止め、人々の心を取り戻せ!


■導入2■
 夜になり、国に帰ったランドメイカー達がみたものは、先程までみんなが生活してい
たはずの国だ。国境を守る兵士達が門をあけ、国に戻ってみれば誰もいない。
 夜だからかといって、大抵誰か一人二人は活動しているものなのに、だ。そもそも部
屋をのぞけばそこに生活している民の姿が見えるのに、その姿がない。
 そう、国民がいなくなってしまったのだ。

 唯一発見できたのは、旅人用の宿から、眠い目をこすりながら出てきた旅の商人。
彼を捕まえ話を聞くと、ランドメイカーたちが出かけた直後、夜になる前に、見知らぬ
旅の学者に率いられて出て行ったという。
 人々の表情はやや興奮してはいたものの、魔法や何かで操られていたとは考えにくい
という。民の心は、ランドメイカーたちの下を離れてしまったのだろうか?
 人々は国境の近くの小さな迷宮に入っていったという。あそこは最近の迷宮嵐で発見
されたエリアで、まだ自分達は踏破していない地域だ。真実がどうであれ、確かめなけ
ればいけない。
 国民を持たぬ宮廷は、言葉すくなに探索の準備に移る。


■円卓会議■
 このシナリオでもっとも特殊なのが編成会議です。
 今回、民の数は国に戻った時(導入2)にいた分だけしか使用することが出来ません。
つまり、最大でも12人。最低だと1人だけです。もちろん彼らに事情を聞いても何も
わかりません。
(本当は知っているのですが、だんまりを決め込んでいます。彼らにとってもランドメ
イカーが夜のうちにかえってきてしまうのは想定外だったのですから、真っ青になって
いることでしょう)
 モンスターの民もいなくなっていますし、逸材すら国内に残っていません。(よって
このシナリオでは、シナリオ終了時意外では逸材の効果を使用することが出来ません)


 予算会議で施設を作ったり、施設を利用することは普通に行えます。
 ただ、その時でも人がいないということは強調すべきでしょう。無人の騎士団で一人
訓練を行ったり、誰もいない娼館にいってHPを増加させてもいいのです。ここは無人
国がどれくらい寂しいか演出するチャンスなので、張り切って演出してあげてください。

 散策を行った場合も、効果は一切代わりませんがすべて
「この前こんなことがあったっけ」という回想シーンになります。

 また、ここでは散策などを行う代わりに「国民が消えたのはなぜか?」を調査するこ
とが出来ます。これは「才覚」か「探索」で目標値9の判定に成功することで判明します。
 やはりこれもPLの不安をあおるためのミスディレクションなのですが、GMはさぞかし
おどろおどろしげに伝えてください。また、成功数によって情報は代わりますが、最大
でも2個しかないということはあらかじめ伝えてください。
また、冗長と判断した場合はこのミスディレクションはすっぱりと切ってしまいましょう。

成功1回:件の学者風の旅人は「教師」と名乗っていた。何でも「人々を教え導く仕事
をしている」といっていたが、まさか他の国の密偵だったのだろうか?

成功2回:国境近くの新しい迷宮はまだ出来て新しく、自分達はまだ探索していないと
ころもあるし、探索を行った限りではエレベーターが残されていたということだ。ラン
ドメイカーではない国民がモンスターに襲われたらひとたまりもないだろう。


■迷宮フェイズ■
 迷宮に向かう際に、道中遭遇表を一回振ってください。

MAP名:西の廃線

  1 2 3
A ■ ■ ■

B ■ □−□ ←入口
    |
C ■ □ ■


部屋は3部屋しかありません。最後の部屋は戦闘などは発生しませんので、実質は
2部屋です。


B2:連結所
かつては分岐点として多くの列車が通ったであろう場所だが、今では見る影もない。
線路の多くは迷宮の壁の中に消えていき、かろうじて数本が他の通路や車両基地
繋がっているだけだ。
……打ち捨てられたはずの車両基地(C2)に繋がる通路から、かすかに話し声や
音が聞こえる。誰かいるのだろうか?
民は君達を見限ったのだろうか、不安が黒い雲のように沸きあがる。
それでも行かなければいけない。もしかしたら、彼らは今まさに助けを求めている
のかもしれないのだ。
しかし、君達の前に巨大な影が立ちはだかる。小さな体に比べると大きな盾を構え
た娘が二人と、それを従えた女騎士。すべて機械でできていた。
「ここより先、ご主人様の許し無き者を通すわけには参りません」
この先に国民達がいる。押し通るしかないだろう。


敵:首なし騎士(前衛)、ごんぎつね*2(前衛)
トラップ:悪意の暴走*2
首なし騎士は倒されそうになる(HPが半減する)と「ご主人様に報告をしなけれ
ば」といって退散してもいいでしょう。
基本はごんぎつねは首なし騎士を「かばう」で守り、首なし騎士ははじめに敵陣後
衛に「首投げ」で人間のくずを作成、人間のくずは「何もしない」を常に選択。
(イニシアチブ要員だからです)
その後首なし騎士は「早足」「突撃」を使って「一歩バックして一歩前進して攻撃」
を行うといいでしょう。


B3:入口:廃線の駅。
どうやらここはかつてメトロ汗国の属国があったところのようだ。
地面には錆が浮かんだ地下鉄の線路が、迷宮の奥へ君達をいざなうようにのびている。
通路の途中に、ひときわ大きなエレベーターが設置されている。
以前の調査ではすでに動くことのないエレベーターだと聞いていたのだが、気が遠く
なるほどの時間をかけて、上か下かわからないどこかから、何者かがやってきた。

敵:腐った卵*2(前衛)、二面人*1(後衛)、クピド*6(本陣3、後衛3)、
乗り手*1(前衛)、雪ウサギ*1(前衛)
トラップ:落とし穴Lv3(通路)、自動販売
クピドは極力「裏クピドの矢」を多用すること。

ここは「施設:駅」です。もしこのMAPを購入した場合は自動的についてきます。


C2:車両基地
部屋に踊りこむと、驚いた顔がそろって君達を出迎えた。
君達の国の国民は、こんな遅くまで汗だくになって、総出で色とりどりに装飾された
山車を飾り付けている。
山車に飾られているのは、紙で作った花や鎖、そして、大きな国王の人形。
国王だけではない、一回り小さいが、そこには他のランドメイカーたちの人形も作ら
れていた。

困惑する人々の中から、パヤットと例の旅の男が姿をあらわす。
ナンプラーの娘パヤット「まぁ、王様。なんてせっかちな、まちきれなくてこっちに
来てしまわれたんですの!?」
旅の男「いやはや、護衛に置いておいたこの子達を撃退するとは、噂にたがわずお強い」


話を聞くと、明日に迫った国王の誕生日を祝うために、国王に内緒で準備をしていたの
だというのです。この男はクリエと言う名の旅の教師で、さまざまな転職所で転職の教
えを与えてきた人物です。

ナンプラーの娘パヤット「王様、本当は明日言うつもりだったんですけれど、今言いま
すね。私、ちょっと前から色々な事をクリエ先生に習っていて、昨日やっと独り立ちす
ることが出来たんです。だから、しばらく王宮のお勤めを休んじゃったりしてたんです
けど……私、逸材になれたんです!」

パヤットのジョブは基本ジョブの中からGMがその国に必要/有益であろうというもの
から選んでください。基本的にはまだ国にいない逸材だとしたほうがありがたみがあっ
てよいでしょう。

クリエ「でも、何でこちらに? 王様には内緒にしていても、他の宮廷の方には話を通
して置くようになっていたはずなのですが……確か、その役目は……」

国民の目が一斉にパヤットに向けられます。
パヤットは「あれ?」という顔をしながら。
「あ、(魔物騒ぎがあったせいで)忘れてましたー」
と、一言で済ませてしまいます。
みんなにどつきまわされるパヤットをよそに、子供達がやってきて国王に花束を渡します。
子供達「おうさま! おたんじょうびおめでとう!」
子供達「みんなでヘソクリをためて、プレゼントをかったの!」
袋の中に入っているプレゼントは、ルールブックに載っているレアアイテムから、ラン
ダムに一つアイテムを決めてください。
気が付けば星は次第に光を強くしつつあります、朝が来たのです。
クリエが召喚陣を描き始め、国民すべてとともにランドメイカーは国許へ帰ってきます。
国境の門のところで待たされ、扉が開くと、そこにはでんと鎮座する山車を筆頭に、
すべての国民がランドメイカーたちを祝うために待ち構えています。
国民「王様万歳! 誕生日おめでとう!」
国民「この国にきてよかった。これからも頼みます!」
山車の上や天井から紙ふぶきが舞い、ランドメイカーたちの頭上に降り注ぎます。
暖かい国民の声に押されるように、ランドメイカーたちは自分の国へと帰ってきたので
ありました。


■終了フェイズ■
今回いなくなっていた国民はすべて「国許に残っていた国民」として扱います。
つまり、極端に税収が高いシナリオになるはずです。
散策フェイズの折に「○○がほしい」などで維持費が増えてしまう場合もあるでしょう
が、その分以上に収入があることでしょう。
また、この時点で<民の声>が一時的に6点増えます。(変動表でどこかの属国になる
ことはない、ということです)

その他は通常どおりにシナリオを終えてください。


■その他■
いろいろと制限をかけて心理的にストレスをかけるシナリオですが、最終的にはかなり
大もうけとなるシナリオです。
途中でネタばらしをしてしまうのももったいないのですが、プレイヤーがストレスを不
快に感じない程度に留めた方が良いでしょう。